BSE牛2頭目確認 検査体制の不備裏付け

やっぱり危ない!アメリカ牛肉

関連/新聞「農民」BSE情報
 六月二十四日に確認されたアメリカで二頭目のBSE感染牛。これをめぐって、食品安全委員会プリオン専門調査会の山内一也氏は「(アメリカの)検査体制の不備が裏付けられた」と指摘(日本農業新聞6月26日)。それでもなお、「何の心配もいらない」(ジョハンズ農務長官)、「輸入再開には影響しない」(細田官房長官)と口をそろえる日米両政府に、国民の批判が高まっています。


 感度の高い方法で再検査やって

 アメリカ二頭目のBSE牛は七カ月前に陰性と判定された牛。この牛を再検査したところ陽性反応が出たため、イギリスの研究所に確認検査を依頼し、BSEの感染が確認されました。今回は感度が高いウエスタンブロット法で検査しましたが、前回は感度の低い方法だったため感染牛を見逃していたのです。

 しかも、検査の過程でこの牛のサンプルを他のものとミックスしてしまう失態を犯し、DNA鑑定でようやくテキサス州産だと突き止めたのは二十九日。同居牛がすでに食用に出回っていることを考えると、背筋が寒くなるお粗末さです。

 今回の再検査は、農務省内の監査局(OIG)の要請で実施されました。OIGは昨年七月にも、農務省が行っているサーベイランス検査の不備を指摘する報告書案を作成。「検査への参加が任意であるため、サンプリングは真に無作為とはいえない」とし、さらに「〇一年十月からの約二年間に、中枢神経障害の兆候があるため、と畜を拒否された牛、六百八十頭のうち五百十八頭が、BSE検査を受けていなかった」と告発していました。

 神経障害のある牛は最もBSEが疑われる牛。しかし農務省はこの指摘を「すでに過去のこと」として一蹴(いっしゅう)した経緯があります。

 安全対策強化の声をすべて無視

 「農務省は安全対策の強化を求める声をことごとく無視してきた」。全国食健連が五月に開いたBSEフォーラムで、元農務省大臣補佐次官のロドニー・レオナルド氏はこう告発しました。これが今日の事態を招いた原因。そして、その背景にあるのは、農務省と食肉産業界の癒着構造です。

 昨年七月にAAI(アグリビジネス説明責任イニシアチブ)というNGOが公表したリポート(英文、A4判で四十n)があります(写真)。タイトルは『アメリカ農務省株式会社―アグリビジネスはどうやって農務省の規制政策をハイジャックしたか』。リポートは「農務省の高官の経歴を見ればアグリビジネスに取り込まれているのがはっきりする」と指摘します。

 リポートによると、衆院農水委の訪米視察団を応対したペン次官は、食肉業界とも深いつながりを持つ農業コンサルタント会社、スパークス社の元副社長。そして、食健連の視察団の交渉相手、ランバート副次官は、全米肉牛生産者牛肉協会(NCBA)で十五年間、さまざまなキャリアを積んできた人物です。

 NCBAは、生産者団体というよりも、食肉企業と企業化した大農場主の団体で、農務省に最も影響力を持つ団体の一つ。昨年の大統領選挙では、BSE飼料規制の強化を先送りすることを条件にブッシュ大統領の支持を表明するなど、徹頭徹尾、安全対策の強化に反対してきました。

 率先して大企業利益守る農務省

 リポートは「こういう人物がBSEの危険を肌で感じていたとしても、以前所属していた牛肉業界の意思に反するのは難しい」と述べています。

 さらにリポートは農務省の歴史を振り返りつつ、「一八六二年にリンカーン大統領によって『民衆のための省』として設立されたが、今やその面影はない。過去に作られた規制を弱め、廃止することに力を注ぎ、スキャンダルが発生しないかぎり、公衆衛生に取り組まない。それどころか、率先して食肉大企業の利益を守っている」と、同省を酷評しています。

 農民連・食健連は、訪米視察の結果を踏まえ、農水・厚労両省と食品安全委に対して「アメリカ政府の情報をうのみにせず、実態を調べるべき」と申し入れてきました。食品安全委の山内氏も「検査の不備を考慮して審議する」と表明しています。実態を知るには、検査データなどの情報公開が不可欠。それを拒むようならきっぱりと輸入禁止を継続すべきです。


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農務省の大丈夫をうのみにできない

主婦連合会参与 和田正江さん

 アメリカが、日本と同じ検査方法を採用していれば、もっと早くBSE牛を見つけていたはず。裏を返せば、見落としていた牛がいたかもしれないということです。農務長官がいくら大丈夫だと言っても、うのみにするわけにはいきません。肉質・骨格による月齢判定も、とても科学的とは思えません。アメリカにきちんと情報公開させ、食品安全委員会で審査することが大事です。

アメリカの対策のズサンさ明らかに

日本消費者連盟副代表運営委員 山浦康明さん

 二頭目の感染牛が見つかったことで、アメリカのBSE対策のズサンさがいよいよ明らかになった。日米両政府は二十カ月齢以下の輸入再開を目指し、食品安全委員会にもこれに限定した諮問をしているが、まったくナンセンス。アメリカ全体の汚染実態を明らかにすることが前提であり、安易な輸入解禁には絶対反対だ。

農務省高官の言葉に反省が全くない

日本生協連・安全政策推進室 原英二さん

 これまでもアメリカにBSEが存在すると考えていたので、二頭目の確認に驚きはしないが、サーベイランスの不十分さを証明したものだ。清浄国を自認していたことが、飼料規制などの対策が大きく遅れた原因の一つだろう。農務省高官の発言にその反省が全くないのが気になる。食品安全委員会はアメリカのBSEリスク・対策について総合的に評価・検証し、改善すべきことは要求し、十分に安全を確保する必要がある。

(新聞「農民」2005.7.11付)

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