アメリカBSE対策は“機能不全”

米国産牛肉の背骨混入事件

日米政府の早期輸入 再開のねらい許すな

 アメリカ産牛肉の背骨混入事件は、同国のBSE対策のずさんさをまざまざと見せつけました。しかしアメリカは、これを「特殊なケース」(ペン農務次官)で片付け、早期の輸入再開をねらっています。小泉首相も、「なぜ責められるのかわからない」などと開き直り、昨年十二月に輸入を再開した責任には口をつぐんだまま。「危険なアメリカ産牛肉は輸入するな」の声をさらに強め、小泉内閣を追いつめる必要があります。


小泉首相の1日

 対策丸投げ輸入再開、責任重大

 「科学的知見を踏まえ、アメリカ産牛肉の輸入を再開しました」――。アメリカ産牛肉から背骨が見つかった二十日午後二時、小泉首相は施政方針演説でこう強弁しました。同日夕、「再開したばかりなのにね。残念ですね」と他人事のように語った首相。国会で演説した舌の根も乾かないうちにウソがばれました。

 そもそも食品安全委員会が昨年末に出した答申は、日米のBSEリスクの「科学的同等性を評価することは困難」と結論していました。首相が言う、輸入再開の根拠となる「科学的知見」など、どこにもなかったのです。

 それにもかかわらず小泉内閣は、アメリカに安全対策を丸投げして輸入を再開。わずか一カ月でその責任を厳しく問われることになりました。

 日本と同等の安全性の保障こそ

 今度の事件であまりにお粗末なアメリカの実態が露呈したのですから、輸入の全面禁止は当然です。同時に、どうすれば日本と同等の安全性が保障されるのか、食品安全委員会にあらためて諮問すべきです。

 ジョハンズ農務長官は二十日に緊急記者会見を開き、違反した業者に常駐していた同省の検査官が、日本向けの輸出基準を知らなかったのが原因だと述べて、個人に責任をなすりつけました。しかし、この業者に対日輸出を許可し、安全証明書を出したのは、ほかならぬ農務省。自らお墨付きを与えた業者すらチェックできない――これは、アメリカのBSE対策が完全に機能不全≠ノ陥っていることの何よりの証拠です。

 ところが安倍晋三官房長官は二十三日、輸入再開にあたって食品安全委員会に諮ることは「必要になるとは考えていない」と述べて、再諮問を否定。政府は、アメリカの報告書を待って判断するとしていますが、本気でけんかする気はなく、「ミス」でアメリカと口裏を合わせて早期再開の道を探っています。

 検査は2百箱に1箱の割合しか

 日本に牛肉を輸出できる施設は全米に約四十カ所ありますが、農水・厚労省の査察が実際におこなわれたのは、アメリカ政府が事前に指定した十一カ所だけ。昨年末の解禁以来、約千五百dのアメリカ産牛肉が日本に入ってきていますが、そのうち開箱してチェックされたのは、ほんのわずか。農水省の基準では〇・五%、二百箱に一箱の割合でしか検査されていません。今度の事件同様、BSEの危険部位が輸入され、検査をすり抜けて、すでに流通している可能性はまったく否定できません。

 これは、日本政府がくり返してきた、国民の命と健康をないがしろにする失政≠サのもの。これ以上、重ねるわけにはいきません。アメリカに、全頭検査や危険部位の完全除去など日本と同等の安全対策を要求し、それが実施されるまで輸入禁止を継続すべきです。

(新聞「農民」2006.2.6付) 

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